1.はじめに
  FET・IGBTインバータのゲートドライブ電源を設計する際,大型のモジュールや素子の並列数が多い場合には,
 電源容量を確認する必要がある。
 電源容量が不足した場合,ゲート電圧が低下し,素子が完全にONできなくなり発熱により破損に至る。
  今回、IGBTモジュールによるインバータ回路設計にあたり,スイッチング周波数を上げるるため
 ディスクリートMOS-FETを並列接続して実験を行った。
 その際,FETのゲートドライブ用電源の容量が十分あるかを,データシートから算出したので,その手順を記す。

2.FET素子と回路構成
 (1)ディスクリートFETはON抵抗が低く,スイッチング損失が少ないInfineon社製のIPW60R018CFD7を選定した。
  主なスペックを下記に示す。
 
 (2)回路構成
  ①FET:3並列接続,単相Hブリッジ回路
  ②使用素子数は合計12個
  ③スイッチング周波数100kHz

3.ゲート電源の容量算出
 (1)FETのゲート電荷特性
   マイナス電圧を印可した時のゲート容量は,
   帰還容量の影響がないことから
   右図の赤線をマイナス側に延長した値で比例関係になる。
   0点を通るのでプラス側に直線を延長し電荷量を求める。

 (2)FET 1個当たりのゲート電荷量の目測
  変数をVgsとし,電荷量Qgの式を立てる。
  ①赤線の直線の方程式:Qg = Δ電荷量 /Δ電圧*Vg = (100nC/10V)*Vg
   ゲート電圧0Vから-15Vまでの電荷量は,Qg = 10*15V = 150nC
  ②青線の直線の方程式:Qg = Δ電荷量 /Δ電圧*Vg+初期値 = (250-28)nC/10V*Vg+28nC
   ゲート電圧0Vから+15Vまでの電荷量は,Qg = (222nC/10V)*15V+28nC = 361nC
  ③ゲート電圧±15V,100kHzで駆動した時の電源容量Pは
   P = Qg * Vg * f = (150nC+361nC) * 30V * 100kHz = 1.53[W]

 (3)Hブリッジインバータのゲートドライブ電源容量
  ①FET 12個使用することから,1.53 * 12 = 18.36W
  ②マージンを1.5倍見て,約30Wのゲート電源が必要とした。

4.参考資料
  「三菱電機IGBTモジュールの使い方」より