1.まえがき
 当社では、電磁接触器、電磁開閉器、配線用ブスバー温度、変流器(CT)など様々な大電流評価を用途にした、
 試験器及びトランス単体等、機種によっては10,000Aを超える製品の設計、製造、販売しております。

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  しかしながら大電流になると、
    1)トランスの1次と2次間の漏れリアクタンスの増加。
    2)2次側の銅バーに接続する圧着端子の接触抵抗の増加。
    3)2次側の銅バー間のリアクタンス。
    4)負荷側の配線の接触抵抗。
    5)引回しのループによるリアクタンス成分。
  これらが加わり損失が増します。
  銅損はとにかく太線を巻けば減らせます。
  ところが、巻線による漏れリアクタンスは
  1次巻線の上に2次巻線を巻く既存の巻線構造では減らすことができませんでした。
  今回、変圧器の文献では既知ですが、2次巻線を1次巻線で挟む方式の構造にして
  実際に実験しその効果を比較しました。

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2. V2の電圧降下(電圧変動率)について
  変圧器の電圧降下について回路図とベクトル図で説明します。
   電圧変動率  \displaystyle \varepsilon = \frac{V_{2}'-V_{2}}{V_{2}}\times100 (%)
    V2’=1次電圧を2次換算した電圧
    V2=2次電圧
    qr=パーセント抵抗電圧
    qx=パーセントリアクタンス電圧

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   今、V2’≒OAとすると
    trans-4
   この式をV2で割ると 電圧変動率 ε= qr cosθ2+qx sinθ2 (%)
   と表すことができます、つまり大電流トランスの漏れリアクタンスや
   配線に寄生するリアクタンスを小さくしないと
    2次電圧降下⇒定格電流が得られない現象が起きます。

3.巻線構造の違いによる漏れリアクタンスの低減      

既存製品 漏れリアクタンス低減製品1 漏れリアクタンス製品2
仕様※ 単相:図番TR-AH1763
容量225kVA
1次電圧400V
2次電圧25V
2次電流9000A
内鉄型
単相:図番 TR-AH1938
容量175kVA
1次電圧200V
2次電圧26V
2次電流5700A
外鉄型
単相:図番 TR-AH2025
容量200kVA
1次電圧200V
2次電圧40V
2次電流5000A
内鉄型
巻線の
概要
・1次巻線の上に2次巻線を巻く
ごく普通のトランス巻線構造。
・放熱効果を良くし小型化するため
コイル間に隙間を設けている。
・2次巻線を1次巻線で挟み
結合を良くする。
・これを1セットとし、分割コイル数を増す。
・1セット間に隙間を設け放熱効果を良くし
小型化している。
・1次巻線を2次巻線で挟み、
それを交互に積み上げ結合を良くする。
・形状は内鉄型として、 分割コイル数を
増やし大電流に対応している。
形状
構造
断面

特性
(実測値)
%抵抗電圧 5%  %抵抗電圧 5.4% %抵抗電圧 1%
%リアクタンス電圧 8.7% %リアクタンス電圧 2% %リアクタンス電圧 1%
%インピーダンス電圧 10% %インピーダンス電圧 5.8% %インピーダンス電圧 1.4%
    ※トランスの仕様は異なりますが、特性の違いがわかります。

4.実験結果
  ・全体に言えることは、%抵抗に対し、%リアクタンスの方が大きいことがわかります。
  ・既存の巻線より、漏れリアクタンス低減品は%リアクタンスが小さいことがわかります。
   特に漏れリアクタンス低減製品1と2の製品は、%インピーダンス電圧を小さくして欲しいとの
   お客様の要求を実現した製品です。

5.むすび
   今回の実験より巻線構造を変えることで、特性カイゼンできることがわかりました。
   しかし、トランス構造を変えても、お客様の接続する負荷によって変化します。
   詳細は当社ホームページの技術情報←こちらをクリックし参照下さい。