当社カタログ品であるTES1-Aシリーズ(小型単相変圧器)の設計手順を以下に紹介します。
計算は少々根気が必要ですが、極力簡素化しています。
<設計事例>を参考にして設計すれば、自ら変圧器の設計が可能になります。

1.設計の準備

設計しようとする変圧器の仕様を明確にします。

<設計事例>
・容量:20VA
・周波数:50Hz
・1次電圧:100V
・2次電圧:20V
・2次電流:1A
・耐熱クラス:A種
 (許容最高温度:105℃、
  温度上昇限界:55℃以下)
※当該機種の耐熱クラスはA種標準

 2.鉄芯の選定

容量により、鉄芯寸法及び積厚は決まります。
(表1:容量別、鉄芯・ボビンデータ参照)
  材質は無方向性ケイ素鋼板を使用します。

 ・容量20VAなので、下記の表1より 

  コア:EI-60
  積厚:25mm
  材質:50A600A

 3.1次巻数の決定

下記計算式により求めます。

 \displaystyle N_{1} = \frac{\sqrt{2} \times E_{1}}{2 \pi \times f \times A_{e} \times B_{m}} (3・1)

N1:1次巻数 E1:1次電圧(V)
f:周波数(Hz) Ae:鉄芯断面積(m2)(表1による)
Bm:最大磁束密度(T) 【基準値:1.4T】

 ・式(3・1)に代入します。

 \displaystyle N_{1} = \frac{\sqrt{2} \times 100}{2 \pi \times 50 \times 0.5 \times 10^{-3} \times 1.4} = 643

∴650回

(きれの良い数値にしました)

 4. 2次巻数の決定

下記計算式により求めます。

 \displaystyle N_{2} = \frac{E_{2} + V_{\varepsilon}}{E_{1}} \times N_{1} (4・1)

N2:2次巻線 E2:2次電圧(V)
Vε:変圧器の内部降下電圧(V)

 

・式(4・1)に代入します。

 \displaystyle N_{2} = \frac{20 + 2}{100} \times 650 = 143

∴143回

Vεは2次電圧20Vに対し10%程度を見込み、2Vとしました。

 

5.1次巻線径の決定
5-1、1次電流の算出

下記計算式により求めます。

 \displaystyle I_{1} = \frac{P}{E_{1}}  (5・1)

I1:1次電流(A) P:容量(VA)
E1:1次電圧(V)

5-2、巻線径算出の基本

巻線径、電流、電流密度の考え方を整理します。

・巻線径と断面積の関係

 \displaystyle S = \frac{\pi \times \phi d^{2}}{4}  (5・2)

・電流密度

\displaystyle \delta = \frac{I}{S}  (5・3)

(5・2)式を(5・3)式に代入すると

\displaystyle\delta =\frac{\displaystyle I}{\displaystyle \frac{\pi \times \phi d^{2}}{4}} (5・4)

よって、

\displaystyle \phi d = 2 \times \sqrt {\frac{I}{\pi \times \delta}}  (5・5)
となります。

φd:巻線径(mm) S:電線の断面積(mm^2)
I:電流(A) δ:電流密度(A/mm^2)

 ・式(5・1)に代入します。

\displaystyle I_{1} = \frac{20}{100} = 0.2

 

\displaystyle I_{2} = \frac{20}{20} = 1
 5-3、1次巻線径の算出

(5・5)式により求めます。

 ・式(5・5)に代入します。

\displaystyle \phi d_{1} = 2 \times \sqrt {\frac{0.2}{\pi \times 3}} = 0.2913

よって0.29φ
※電流は3A/mm^2に設定します。

 

5-4、2次巻線径の算出
上記5-3と同じ考えで、(5・5)式により求めます。

 

 ・式(5・5)に代入します。

\displaystyle \phi d_{2} = 2 \times \sqrt {\frac{0.2}{\pi \times 3}} = 0.6514

よって0.65φ

6.巻線抵抗の計算

\displaystyle r = \rho \frac{l}{S} (Ω) (6・1)
L = ((W + D) \times 2 + T \times 8) \times N \times 10^{-3}  (m) (6・2)

ρ:導体の抵抗率(Ω・mm^2/m)【20℃時0.01724】
L:巻線長(m) W、D、※T:ボビン寸法(mm) 図1参照

※1次巻線のT寸法= \displaystyle \frac{T}{4}
※2次巻線のT寸法= \displaystyle \frac{3}{4}

 

・式(6・1)、(6・2)に代入します。
1)1次巻線抵抗

L_{1} = ((22.5 + 26.6) \times 2 + 2.1 \times 8) \times 650 \times 10^{-3} = 74.8m

\displaystyle r_{1} = 0.01724 \frac{74.8}{0.066} = 19.5 Ω

2)2次巻線抵抗

L_{2} = ((22.5 + 26.6) \times 2 + 6.3 \times 8) \times 143 \times 10^{-3} = 21.2m

\displaystyle r_{2} = 0.01724 \frac{21.2}{0.332} = 1.1 Ω

 7.銅損の計算

巻線抵抗による損失を計算します。

P_{c} = r_{1} \times {I_1}^2 + r_{2} \times {I_2}^2 (W) (7・1)

Pc:銅損(W)

 ・式(7・1)に代入します。

P_{c} = 19.5 \times {0.2}^2 + 1.1 \times {1}^2 = 2 W
8.鉄損の計算

Pf=Pa×Pb (W) (8・1)

Pf:鉄損(W)
Pa:1kgあたりの鉄損(W/kg)
Pb:トランスの鉄芯質量(kg)

 ・式(8・1)に代入します。 

Pf = 4.8×0.46 2.2 W

※鉄損は、最大磁束密度1.4T時、鉄損特性より4.8W/kgとします。
※鉄芯質量は、表1によります。

9.電圧変動率の計算

\displaystyle \varepsilon = \frac{P_{c}}{P} \times 100  (%) (9・1)

ここの値が4項、2次巻数決定時の変圧器の
内部降下電圧:Vε(V)に反映されます

  ・式(9・1)に代入します。 

\displaystyle \varepsilon = \frac{2}{20} \times 100 = 10  %

10.効率の計算

\displaystyle \eta = \frac{P}{P + P_{c} + R_{f}} \times 100  (%) (10・1)

 

  ・式(9・1)に代入します。 

\displaystyle \eta = \frac{20}{20 + 2 + 2.2} \times 100 = 82.6 %

以上で使用する鉄芯、1次・2次それぞれの巻線径、巻数がきまりました。
設計完了です。

                          表1 容量別、鉄芯・ボビンデータ

形名
TES1-
容量(VA) 鉄芯情報 ボビン寸法
鉄芯 積厚 断面積 質量(kg) W T
名称 (mm) (m2) (mm) (mm) (mm)
0.5 0.5 EI-28 11 0.088×10-3 0.042 10 13.4 4.2
1 1 EI-35 10 0.096×10-3 0.056 12.3 12.3 6
2 2 EI-38 13 0.14×10-3 0.091 13.8 15.4 5.6
5 5 EI-41 13 0.17×10-3 0.1 15.5 15.4 6.4
10 10 EI-48 20 0.32×10-3 0.24 18.9 22.7 6
15 15 EI-57 23 0.44×10-3 0.38 21.5 25.7 7.6
20 20 EI-60 25 0.50×10-3 0.46 22.5 26.6 8.4
25 25 EI-60 30 0.60×10-3 0.55 22.5 31.6 8.4
30 30 EI-66 25 0.55×10-3 0.56 24.5 27.2 8.4
35 35 EI-66 30 0.66×10-3 0.67 25.6 32 8.4
40 40 EI-66 35 0.77×10-3 0.78 25.6 38 8.8
50 50 EI-66 40 0.88×10-3 0.89 24.8 42.8 8.8
60 60 EI-76.2 35 0.89×10-3 1 28.6 38 10.4
75 75 EI-76.2 40 1.02×10-3 1.2 28.6 43 10.4

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